向井くんと私

向井くんと私

ドラマ『こっち向いてよ向井くん』に思いがけずハマっています。

「恋愛迷子たちのラブストーリー」と聞いて、つまんなそ~。と思ったのですが、評判が良かったので遅れて見てみたらハマりました。
なかなか見たことが無いドラマというか、見ていると、自分を振り返ってしまうドラマなのです。

主人公の向井くんは33歳独身で実家暮らし。
雰囲気良し!性格良し!仕事もできる!”いい男”だけど、気がつけば10年間、恋をしていない!というキャラクターで、演じるのは赤楚衛二くん。
「顔が赤楚の俺」と言われるほど、この向井くんに自分を重ねてしまう人が続出しているようです。
40代既婚女性にカテゴリーされる私でも、向井くんを見ていると「顔が赤楚の俺」だと思ってしまいます。

ある日、向井くんは義弟が経営するカレー屋さんで、常連客の坂井戸さん(演:波瑠)と知り合います。
自分のことが好きだと思っていた後輩が、別の同僚と付き合い始めたことにショックを受けていると、坂井戸さんは「そもそも、向井くんは本当にその子のことが好きだったの?」と問いかけます。
そして、

適当に雰囲気で過ごして、なんとなーくかわいい子と付き合って、なんとなーく幸せになれるわけないよ。
みんな、欲しいものはちゃんと欲しいって願ってると思う。

と言われます。

がーん!
帰り道、向井くんは考えます。
「どんな人生だってありだって思ってたけど、どんな人生についても深く考えてなかっただけかもしれない」
と振り返り、
「だって結局、とうに滅びたはずの不変の家族像を思い浮かべてしまう」と、
サザエさんのそれだと分かるちゃぶ台を家族で囲んで、波平のポジションに収まる向井くんが映し出されます。

「あれが俺の望むものなのか?俺は一体何が欲しいんだろう」

そんな第1話の最後、偶然会った坂井戸さんに駆け寄って、
以前に坂井戸さんが言っていた別のことが気になって、「それって女の子みんなそう思うの?」と尋ねます。

あー、あのね。「女の子」なんて人格はないの。
人それぞれ。相手に合わせて考えて

くうーーー。
この「女の子なんて人格は無いの」が、ずしーんときました。

「若い子って」「子どもって」「おじさんって」「ママって」・・・
言ったり言われたりする数々の主語らしきものには気を付けなくちゃ。
自分を、誰かを、何かに無理やり当てはめようとしていないか?

これが第1話なので、ここから色んな登場人物がそれぞれに迷いを抱えている姿に共感できます。
結婚がゴールじゃない時代の恋愛ドラマだそうです。
シッコウ!~犬と私と執行官~』では、織田ちゃん演じる執行官が「トレンディドラマの見過ぎだ」と相手を諌めるシーンが話題になりました。
トレンディを演じていた人に、トレンディを揶揄させる2023年。

サザエさんも、トレンディドラマも、結婚ゴールイン的な世界観も、
「古い」と頭ではわかってるけど、その価値観は自分自身に深く刷り込まれていて、自分自身はどうしたいのか?なんて言われてもわからなくなってしまう。
さらに、登場人物がみんな優しくて他者を思いやってしまうのですね。
親の言葉に傷ついても、親を拒絶することもない。

私は40代になり、30代から弾き出されてしまったけど、なるほどやっぱり、もう私は30代ではないなと思います。
私はどっぷりと「幸せ=結婚」という世界に生きてきました。
そこに疑問を挟む余地すら持てなかった。
いや、少しの余地はあったけど、親や周囲の圧力にムカつきながら、泣きながらも、その価値観に迎合するのが最も生きやすい方法でした。
1人で生きる自信も無かったし。
私たちは流されることができた最後の世代なのかも。

向井くんたちは、ただ流されるのではなく、疑問を持つ余地がたくさん与えられているのかなあ。

ドラマを通して描かれているのは、
自分はどうしたいのかを明確にする重要性。

なんでもOKの時代だからこそ、「女の子は」「男の子は」「普通の33歳は」なんてざっくりした主語に自分をはめずに、主語を自分に取り戻す。
話はそれからだ!

「顔が赤楚の俺」と言いたくなるほどリアリティのある言葉が出てきますが、赤楚くんと波瑠ちゃんの現実離れした美しさがドラマを軽やかに華やかにしてくれて、楽しいドラマです。

結婚がゴールじゃない時代の恋愛ドラマというだけあって、ドラマの最後がどこに着地するのかわかりません。
私はハッピーエンドが好きだけど、何がハッピーエンドなのか?ってことですよね。

1人で生きるのも、誰かと生きるのもハッピーエンド。

藤井風のように「わたしに会えてよかった」というのもハッピーエンドだし、主人公の向井くんと坂井戸さんが結ばれるという王道パターンもハッピーエンド。
それが、本当に自分が望むことならば!

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