宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』。
公開当初はあえて販売されていなかったパンフレットも販売されるようになり、
もうネタバレしても良さそうな雰囲気になりましたね。
今作は、事前に全く情報が無い中で公開されました。
私は、公開初日に観たい!でも今日は通常料金2,000円・・・うーん、と最寄りの映画館の予約システムを眺めているうちに、どんどん席が埋まって早々に諦めがつきました。
みんな、すごいな。
平日を満席にする駿の集客力、凄まじい。
しかし、本当に一切の情報も無く、観たい。
早くしないと何かを知ってしまいそうです。
公開初日にTwitter(まだXとは言いづらい派)を開いたら、「キムタク」という文字が見えて、だめだーとTwitterを閉じました。
これ以上Twitterを見たら、絶対に何かを知ってしまう。
私にとってのTwitterは推し活情報源。
もしかしたら、近所にSnow Manが出没しているかもしれないじゃないですか?
このままだと、Snow Manのアレコレを見逃してしまう。
さっさと観に行かねば。と、翌日、レイトショーへ。。
土曜日夜の20時半。
東映撮影所に隣接した、近所のシネコンは人でいっぱい!
一番大きなスクリーンが満席です。
みんなで静か~にその時を待ちます。
なんの情報も無い映画をこんなにたくさんの知らない人たちと観る不思議。
これから私たちは秘密を共有するのだ。
いいか、これから目にするもの、耳にすることは決して口外してはならぬのだぞ。
宮崎駿からのメッセージを全身で受け止めるのだ!という緊張感とワクワク感。
これが最後になるのか・・・って、あれ?10年前も思ったな?
『風立ちぬ』を遺書を開くような気持ちで、目を皿にして耳の穴をかっぽじって観たことを思い出しました。
今度こそ最後か。最後じゃなくてもいいけど。
映画館とは思えない厳かな雰囲気の中、始まりました。
あ、こういう時代の話なんだ。
ちょっと『風立ちぬ』っぽいな。
え?あ、これがキムタクか。やっぱり知らずに観て、え!キムタク!?って驚きたかったな~。
この映画は、すごく端的に言えば、男の子とお母さんのお話ですね。
主人公は眞人くんなので、眞人くん目線、息子目線で語るのが正しいのかもしれませんが、私は3歳の男の子の母なので、どうしても母の無念が先に立ってしまいます。
眞人くんを息子を見るような気持ちで、何もできないもどかしさを抱えながら見ておりました。
すまぬ、息子よ。何もできない母を許しておくれ。
不思議な世界に迷い込んでからは、息子に会いたい母の気持ちで観ていました。
どこかにきっと母がいる!そう信じて観ていました。
しか~し、その不思議な世界の奥深いこと。
ワラワラ!命の不思議をあんな風に描くなんてあっぱれです。
生まれゆく命、生まれられなかった命、消えゆく命・・・。
ただ不条理としか思えない事象を反対側から見た気がしました。
ちょうどKaiさんの第3チャクラ講座の余韻が残っていたので、火と水の解釈も、そういうこと?と思う点がちらほら。
極めつけは、扉のシーンかなあ。
スピリチュアル的解釈以外にどんな解釈ができるのでしょう?
と思っていたら、内田樹先生がこんな記事を書いてらっしゃいました。
知の巨人・内田先生。釈徹宗先生との共著も新しく、仏教を含めて幅広い見識をお持ちだと思いますが、
スピリチュアルなイメージは無かったので、「スピリチュアル的解釈以外にどんな解釈ができるのでしょう?」という私の問いに答えて下さる気がしました。
さすが、フランス文学者的見地とでも申しましょうか。
でも、やっぱり私は「スピリチュアル的解釈が最も楽しい」という結論に至りました。
世界はこんなふうになってるのかもね~というざっくりとしたイメージを持つことができて、私は満足。
宮崎駿監督が見ている世界を覗けたことが嬉しい。
そして、何度でも観たいです。
パンフレットと合わせて、『君たちはどう生きるか』を特集した『SWITCH』が話題になっています。
主題歌を担当した米津玄師のインタビューが一見の価値ありです。
米津玄師と言えば、あの『パプリカ』を作詞作曲した天才ですね。
『もののけ姫』を観たのが小1ですって。私は中3でした。
そこから、『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』・・・をリアルタイムに観てきたことを話し、
宮崎駿を「唯一の恩師」と表現していました。
ジブリ映画を語る時、みんな同じ時代を生きてたんだなあと思います。
私はいつも、映画を楽しもう!という気持ちよりも、宮崎駿のメッセージを受け取る気持ちで観てきました。
映画を観ること、そのものが体験。
そして、何度観ても、最初に映画館で観た時の気持ちを思い出します。
インタビューの中に、米津玄師が宮崎駿から言われたこの言葉が出てきます。
「子どもたちに、この世は生きるに値するということを映画を通して伝え続けていきたい」。
この世は生きるに値するということを宮崎駿監督はずっとおっしゃっています。
『もののけ姫』『ハウルの動く城』で声優を務めた美輪明宏さんが、かつてこんなことをおっしゃっていました。
「宮崎駿監督の映画は、宮崎監督が試されているのではなく、観客が試されているんですよ」と。
面白いとか面白くないとか、意味が分かるとか分からないとか、そういうことではなく、今回もやっぱり「試されている」という気がしました。
映画を観て、何を感じ、どう思う自分なのか。
あ、これが「君たちはどう生きるのか」ということなのか?
映画館でもう一回観たいなあ。