フランス語でしか見えない世界がある。

フランス語でしか見えない世界がある。

先週のある日、朝6時からNHK・Eテレで放送されている『旅するフランス語』をたまたま見ました。

イヤイヤ期の息子が無駄に早起きをして暴れており、息子を黙らせる番組を!とすがる思いでEテレをつけると、やっていたのが『旅するフランス語』だったというわけで。

がっかりしつつそのまま見ていると、出演者の男の子が講師役の人たちに見送られてはなむけの言葉を贈られています。
ああ、3月の最終週だから最終回なのか。

フランス語でしか見えない世界があるから、これからもフランス語の勉強を続けてほしい。
それは、新しい視点を持てるということだよ

この番組は、フランス以外でフランス語を話す国や地域を表す「フランコフォニー」にスポットを当てていたようで、最終回はタヒチでした。フランス領ポリネシア。
番組を卒業する男の子は「僕はカナダぐらいしか知らなかったけど、世界にはたくさんのフランコフォニーがあると知れて嬉しかった」というような挨拶をしていました。

最近のウクライナの状況を見ると、世界中にフランス領やフランコフォニーが存在して、フランス語が公用語になっているって、それはそれでどうなのよ?怖くない?なんて思ってしまいましたが、それはさておき。

「外国語を勉強することは新しい視点を持つということ」だと、私も思います。
私も20代の頃、フランス語を勉強していた時期がありました。
大して身につかなかったし、もう忘れてしまったけど、世界には日本語にない言葉や表現があるとわかっただけでも勉強して良かったです。

点々

とても印象的だったのは「あなたの職業は何ですか?」という質問。
フランス語では「Qu’est-ce que vous faites dans la vie?(ケスク ブ フェットゥ ドン ラ ヴィ)」と聞きます。

“dans la vie” は「人生において」という意味。
直訳すると「人生において、あなたは何をしていますか?」となり、これが「仕事は何をしていますか?」の意味になるそうです。

“faites”の原型は、”faire”(フェール)という動詞です。
私は、職業を尋ねるために”faire”が使われていることに興味を持ちました。
“faire”は、英語の”do”と”make”の意味があります。
それに、楽器の演奏やスポーツをする時にも使うので”play”の意味もあるかと。
万能なのでよく使う動詞なのですが、あなたは人生において何を”faire”するのか?と聞かれる、「あなたは人生において何を創造しているのか」と問われているような気がするのです。

・・・重い。
フランス人、いちいち重い。
とはいえ、”faire”には”創造する”というほどの意味はないので私が勝手に重くしているのですが。

当時は保険会社のOLだったので「Je suis employé dans assurance.」(私は保険会社の社員です)と答えていました。
職業を聞かれたのだから返答としては間違っていないと思うのですが、ただ単に食い扶持を答えるだけで良いのだろうか。
私は毎日、人生において何を”faire”しているのだろう。
毎日働いているけど、何も”faire”していない気がする。

フランスではごくごく普通の表現なのでいちいち己の生きざまを問うているわけではないのですが、考えてしまいました。
私は何と答えたいのだろうかと。

点々

他にも、フランス人に「フランス人って、〇〇だよね」みたいなことを言うと「Ca depons de la personne.」(サデポン ドゥ ラ ペルソンヌ)「それは人による」とよく言われました。
略して「Ca depons.」(サデポン)

この「サデポン」が、私は大好きでした。
当時はエビちゃんOL全盛期で、私のまわりには「こうあらねばならない」という価値観だらけでした。

「それは人による」。
些細なことに対して、肩をすくめて「カナ、何を言っているの?そんなの人によるでしょう?」と言ってくれるフランス人に救われました。
考えてみれば、何でもそうなのです。

点々

「サデポン」と思えることは、子育てをするようになってからすごく役立ちました。

子育ては情報戦です。
ありとあらゆる情報で溢れかえっていて、ちょっとした宗教です。
よく「母乳信仰」って言いますよね。
子育てはみんな必死だし、視野が狭くなって狂信的になるからか「信仰」なんて言われちゃう。

赤ちゃんに靴下を履かせた方が良いと言う人もいれば、裸足の方が良いという人もいる。
離乳食は絶対に手作りするという人もいれば、市販のベビーフードの方が栄養があるから作らないという人もいる。
母乳VSミルク、紙オムツVS布オムツ、予防接種打つVS打たない、離乳食を始める時期・・・。

そんなの全部「サデポン」です!!

「え、普通〇〇だよね?」

本や雑誌に書いてあることや、お医者さんや保健所の保健師さんが発信する「こうしなければならない」という情報を遵守しているお母さんがたくさんいました。
前の授乳から、まだ1時間しか経ってないのにもうお腹がすいたみたい。でも、授乳は3時間おきって言われているのにどうしよう?とか。5ヵ月になったから、離乳食を始めなきゃ!最初は重湯から!でも、全然食べない(泣)とか。

私の場合、子どもを取り上げてくれた助産師さんから「必要なことは全部赤ちゃんが教えてくれるから、赤ちゃんの言うことを聞きなさい」と言われました。
私にはそれが一番しっくり来たので、それを信じることにしました。

その結果、周りと歩調が合わなくなり「サデポン」と思わないとやっていられなくなったわけですが・・・。

点々

たまたま見た『旅するフランス語』で、そんなことを思い出しました。
最近、自分にも子どもにも「こうあらねばならない」と思うことが増えていることに気づきました。
そんなの「サデポン」だし、私は私の人生において、ちゃんと”faire”することを意識せねば。

保育園の送り迎えですれ違う若いママさん達に、「あ~若くしてママになるっていいなあ。体力あるし、可愛いし、子育て終わってもまだ40代じゃん!いいなあ~」と思っていたけど、彼女たちが子育てしている年齢の頃、私は、先に自由を謳歌してしまったのだから仕方ない。

わずかだけれど、20代の自分がフランス語という手弁当を持たせてくれた。
疲れたときは、ちょっと覗いてつまんでみるか。


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