2021年、エビちゃんとの和解。

2021年、エビちゃんとの和解。

皆さまは「エビちゃんOL」って覚えてますか?
初めて聞いた方もいらっしゃいますか?

“エビちゃん”とはモデルの蛯原友里さん。
2005年あたり、マクドナルドのCMで「エビフィレオ」!と手でハートマークを作る姿は、まさに時代のアイコン。
“可愛い”の象徴でした。

当時は「神」といえば神社仏閣の神様にしか使われませんでしたが、今なら、確実に「神」です。
エビちゃん、まじ、神。

そのエビちゃんのファッションを真似するOL達が「エビちゃんOL」です。
アンサンブルのニットに、膝が隠れるか隠れないかぐらいの丈のスカートが定番。
足元はヒールのパンプス。もちろん、髪は巻いてください。

女子にも男子にもモテることが至上命題。
めちゃカワで、めちゃモテ。

そんなエビちゃんOLが席巻していた時代に、私は社会人になってしまいました。
しかも、女子に可愛さが求められる金融機関の一般事務職。

私は頑張りました。

エビちゃんOLとして。

ギリギリ悪目立ちしないラインを目指して、本音と建前のせめぎ合い。

思い込みかもしれませんが、当時は何にでも「正解」があった気がします。
勤め先にも、ファッションにも、結婚相手にも、休日の過ごし方にも。

エビちゃんは『CanCam』で正解を示してくださいました。

合コンでは、いかにエビちゃんぽいかを競っていた気がします。

と、ここまで書いて、自分のひねくれっぷりに驚きますが、そんな非エビちゃんOLだった私がエビちゃんが雑誌で着ていたワンピースが欲しいんです。

エビちゃんになりたいんです2021。

ブルーのふんわりしたマキシワンピで、素材はコットン。
気づいた時には売り切れだったのですが、最近、色違いで再販されていることに気づきました。

私がエビちゃんが着ているものが欲しくなる日が来るなんて。
いや、エビちゃんが私好みのコットンのワンピースをお召しになる日が来るなんて、思いもしませんでした。

昔の自分に教えてやりたい。
エビちゃんが『LEE』のモデルをやっていること。
コットンのワンピースを着ていること。
あんたがそのワンピースをめちゃくちゃ欲しがっていること。

いつから、エビちゃんに対する私の気持ちが変わったののか?

おそらく「慣れ」です。
エビちゃんは、数年前から私の愛読雑誌『LEE』に登場しているので、すっかり見慣れて親近感が沸くようになったのだと思われます。

数年前、『LEE』でエビちゃんを初めて見た時は裏切られた気持ちでいっぱいになりました。
ブルータス、お前もか。
LEEよ、なんであんたまでエビちゃんなのよ。
私がこれまでLEEに抱いてきた信頼と実績をどうしてくれるんだ!
エビちゃんは、セントジェームスのボーダーとか着ないよ?
エルベシャプリエよりエルメスだよ?
ドレステリアのパーカーも着ないよ?!(勝手なイメージ)

かつて、エビちゃんOL達に抱いた劣等感と反骨心が蘇ってきました。
エビちゃんは私にとって同調圧力の象徴
“可愛い”の押し付け。
チューリップにだって、赤白黄色があるのに、赤だけが正解とされるような違和感。

そうさ、僕らは世界に一つだけの花じゃないのか?

しかし、エビちゃんに罪はない。
昔も今も可愛い。
汐留にあった巨大なアネッサのポスターの輝きは忘れません。

私が嫌だったのは、エビちゃんOLの同期達による正しさの押し付け。
「カワイイ=エビちゃん」。
エビちゃんを目指すことは当たり前という空気。

今思えば、あれはハラスメントだな。
エビちゃんハラスメント。エビハラだ。
あれ?苗字になっちゃった。

いや、エビちゃんOLの同期達にも罪は無い。ただただ素直で優しかったのだ。
「30歳までに結婚できなかったら死ぬ」と本気で思っていたから、30歳までに結婚できなさそうな私、エビちゃんでも押切もえちゃんでもない私のことを心から心配してくれていたのだ。ありがとう!

エビちゃんにしてみれば、いい迷惑ですよね。
羨望と嫉妬、好感と嫌悪感を浴びせられるのも大変だなあ。

そういえば、昔、押切もえちゃんが情熱大陸に出た時のコピーは「可愛いだけでは生きてはいけない。可愛くなければ生きてはいけない」だった。
『CanCam』のモデルにだけ適用してくれれば良いものをなぜか一般の私たちまで「可愛くなければ生きてはいけない」みたいな空気にしやがって。
『CanCam』では「なれるものなら、押切もえ」など、「なれるものなら」シリーズもあった。(めっちゃ詳しいやん私!)
今もあるのかなあ?

昔は、エビちゃんと同じワンピースを着ればエビちゃんOLになれたけど、今は、エビちゃんと同じワンピースを着てもエビちゃんにはなれないな。
もうエビちゃんはテンプレートではないのだ。

エビちゃんが変わったのか?時代が変わったのか?

雑誌がお手本となって、民衆を導く時代ではないことはたしかだ。

エビちゃんOLの時代は、ジェンダーギャップもルッキズムも無い時代。

昨年あたりから、少し前までOKとされてきた言動や行動、社交辞令が次々とNGになった気がしました。
オセロがバタバタとひっくり返るようです。
知らず知らずのうちに、自分に染み込み、良かれと思ってやっていたことや、社会人としてのマナーだと思っていたことが、誰かを傷つけ、自分自身をも蝕んできたのだと気づき始めました。

「愛されOL」って言葉はまだあるのかな。
現代の若い女性はどう思うのだろう。
かつての「モテ」の概念が、現代の「映え」にすり替わっただけなのだろうか。

なんて考えながら、こんなんで、よくぞ15年もあんな古くさい男尊女卑な会社に勤められたなあ私。わははは

私が和解できたのは、エビちゃんではなく自分自身なのかもしれません。
和解というか、私の価値観の変化によって、見解の相違が是正されたというか。

物事を二元的に見る癖が、劣等感を生み出していたということに気づきました。
エビちゃんかそうでないか。カワイイかそうでないか。流行ってるかそうでないか。

可愛ければ優遇されて当たり前♪逆もしかり♪みたいなアホな感じを「それ『ルッキズム』やで。ダサッ」と吹き飛ばしてくれる現代は痛快です。

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